葬儀や告別式で読まれる「弔辞」とは、故人に贈る言葉です。 故人との思い出や感謝の気持ち、亡くなってしまった悲しみを伝えます。
しかし、悲しみは言葉では言い表せないほど深く、いざ弔辞を書こうとすると「どんな言葉を選べばいいのか」「失礼な表現はないか」など悩んでしまうことも多いでしょう。
この記事では、弔辞の書き方・文例・マナーについて詳しく解説します。 故人への想いを言葉に乗せて、心からの弔辞を捧げられるようぜひ参考にしてください。
弔辞とは葬儀や告別式にて、故人との関係が深かった人が話す、故人の生前の行いや人柄を偲び冥福を祈る言葉です。 別れの悲しみと感謝の気持ちを込めて、心を込めて読み上げられます。
弔辞は故人に贈る言葉でありながら、遺族や参列者の心を癒やす役割も担っています。 具体的には、以下のような目的があります。
弔辞を読む人は、一般的に故人と特に親しかった人が選ばれます。 友人、同僚、上司、部下、親族など、故人との関係性によって適任者は異なります。
また、弔辞を読むタイミングは、告別式にて僧侶の読経やお焼香の後に行われるのが慣例です。 しかし、宗教・宗派・地域によっては、葬儀の途中に読まれる場合もあります。係の案内に従って動きましょう。
弔辞は、故人との最後の別れを告げ、冥福を祈る大切な機会です。 想いが伝わる弔辞にするために、基本的な構成と書き方のポイントを押さえましょう。
弔辞は、一般的に以下の5つの要素で構成されます。
弔辞を書く際には忌み言を避けましょう。忌み言葉とは「その場にふさわしくない言葉」です。特に耳にすることが多い、忌み言葉の1つである「重ね言葉」についても説明します。
忌み言葉は遺族の心情を傷つける可能性があるため、使用しないように注意が必要です。
故人の宗教や宗派によって、ふさわしい言葉遣いが異なります。
例えば、仏教では「成仏」「冥福を祈る」といった表現が一般的ですが、神道では「御霊(みたま)の安らかならんことを祈ります」といった表現が用いられます。 キリスト教では、「天国での安らかな眠りをお祈りいたします」といった表現が適切です。
その宗教にそぐわない言葉も忌み言葉です。 事前に故人の宗教や宗派を確認し、ふさわしい言葉遣いを心がけましょう。
弔辞の長さは、一般的に3分程度が目安とされています。 長すぎると参列者に負担をかけてしまうため、簡潔にまとめることが大切です。
400字詰め原稿用紙3~4枚程度におさまるように、内容を整理しましょう。
弔辞は、故人との関係性によって内容や表現が変わります。 ここでは、友人・知人、会社関係者など、それぞれの関係性に応じた弔辞の文例を紹介します。
先生、謹んでご逝去を悼み、生前のお教えに対し、改めて御礼申し上げます。 私が先生にお教えを受けたのは、もう20年も前になります。振り返りますと、私どもが中学校の制服で過ごしたころが思い出されます。 先生は社会科のご担当の他、野球部の顧問もされていらっしゃいました。勉強の面だけでなく、思い切りスポーツをしてしっかり体を鍛えておきなさい、といつもおっしゃって熱心にご指導くださいました。厳しくも優しいご指導に敬愛する生徒は大勢おり、誰からも好かれる先生でした。 卒業後も野球部の同窓会によく出席され、なにかと相談に乗ってくださり、励ましてくださいました。 この度の突然のご訃報、いまだ信じられない思いでいっぱいです。今後は先生の教えを忘れることなく、子どもや後輩に伝えてまいりたいと存じます。これまでのお導きに感謝し、安らかに眠られることをお祈りいたします。 (1)
〇〇君、今、君がこの世にいないなんて、夢ではないかと思う。しかしそれが、まぎれもない事実だと知って、僕はぼう然とするばかりです。 もう、君といっしょに海に行くことが二度とできなくなってしまった。 好きなサーフィンのためにオーストラリアに行こうとアルバイトしていたのに……。18歳になったばかりの君がいつもの海で1人でおぼれてしまうなんて、このやり場のない怒りをどうしていいかわからない。みんなで遊んだ海での思い出が頭の中を駆けめぐり、君の他界が信じられないでいる。本当に楽しかったね。君との友情は消えることなく僕の胸の中で続いていく。 〇〇君、どうか安らかに眠ってください。 (1)
謹んで、〇〇〇〇さんのご霊前にお別れの言葉をささげます。 〇〇さんの霊前にこうして立ってみても、まだ信じられない思いでいっぱいです。浮かんでくるのは、会社でのお元気な姿ばかりです。先月ご入院された折には、職場一同心配しておりましたが、手術後、快方に向かっていらっしゃるとお聞きして、全快を倍じておりました。ご出社の日はいつ頃かとおうわさしておりましたところへ、突然の悲しいお知らせでした。 余病を併発しての急変とのこと、まことに残念でございます。ご家族の皆様のお悲しみもさぞやとお察し申し上げ、胸の痛む思いがいたします。〇〇さんも幼いお子様を残してさぞ、心残りでございましょう。 このうえは、何をいっても返す由のないことになってしまいましたが、これからのご遺族をどうか、天国から援助くださいますようお願いいたします。 〇〇さん、どうか安らかにお休みください。 (1)
〇〇さんの霊前に謹んで惜別の言葉をささげます。 不慮の事故により、〇月〇日、突然逝去されました。思いがけず早すぎたお別れが、まるで悪夢の出来事のように感じられ、深い悲しみに包まれています。 振り返れば、あなたが入社して以来5年、日々情熱を持って業務に邁進し、すばらしい成果を上げられてこられました。このような優秀な人材を失ったことは、私ども仕事仲間にとって大打撃であることは言うまでもありません。ご両親、ご家族にとりましては、あまりにも残酷な運命だったという他ありません。 〇〇さんが志半ばで果たせなかった仕事は、私どもが立派に引き継ぎ、ご遺族の皆様には微力ながらできる限りのご支援をさせていただきます。 どうか安らかにお眠りください。 (1)
謹んで〇〇君の霊にささげます。 君は〇月〇日、47歳にして航空機事故のため忽然としてこの世を去りました。君の急逝は残念至極であります。まことに惜別の念に堪えません。 君は、国際部部長として日々業務に邁進し、ヨーロッパ諸国を飛び回っておられました。今回の出張は、〇日〇日に予定されている〇〇社との契約締結の最終打ち合わせのためのものでした。 帰国に当たり、「うまくいった」との君の報告に気をつけて帰れと声をかけたのに、それがこのようなことになるとは、天を恨むばかりです。 君は帰国の途上、飛行機事故という奇禍に遭われたのであります。 志半ばにして永眠された君の無念はもちろんでしょうが、君を失うことは会社にとって大きな痛手であり、また痛恨の念に堪えません。 ご遺族のご悲嘆と今後のご苦労を推察するに、胸の迫る思いがいたします。及ばずながら、私ども一同、できるだけお力になりたいと念じております。 どうぞ、〇〇君、安んじてご瞑目ください。 (1)
本日、〇〇商店〇〇〇〇さんの柩を送るに当たり、謹んで弔辞をささげます。 あなたは、ご家族の皆様の手厚い看護もむなしく、〇月〇日逝去されました。痛恨のきわみでございます。 あなたと仕事のことで多くのことを相談し合ったのは、つい3日前のことでした。その晩心臓発作で倒れられ、不帰の客となられたのです。突然の悲しい知らせに、ただぼう然とするばかりです。新しい店の出店を計画されており、志半ばにしての急逝、さぞ、心残りでしたでしょう。 私とあなたとの付き合いは、商売のことのみならず、困ったことがあるとなにかと相談に乗ってもらったものでした。あなたは人の話に熱心に耳を傾け、耳の痛いこともあったでしょうに怒らずに聞き入れる懐の深い方でした。いくら悲しんでも、あなたは帰ってきません。畏友を失い、もう商売の夢を語り合うこともないかと思うと本当に残念です。 ご遺族におかれましては、さぞかしお嘆きのことでしょう。心からお悔やみ申し上げます。 (1)
1) 勝見陽一. “第3章 あいさつと弔辞”. 最新版 葬儀・法要・相続の早わかり百科.東京,主婦と生活社,2007,p.152~153
弔辞を読む際には、服装や立ち振る舞い、声のトーンなど、様々なマナーに気を配る必要があります。
弔辞を読む際の服装は、喪服が基本です。
男性は黒いスーツに白いシャツ、黒いネクタイ、女性は黒いワンピースやスーツ、アンサンブルなどを着用します。 派手なアクセサリーやメイクは避け、地味な装いを心がけましょう。
関連記事「告別式完全ガイド|告別式の流れ、マナー、基礎知識まとめ」
弔辞を読む際は、姿勢を正し、ゆっくりとした動作を心がけましょう。 遺族や故人への敬意を表すため、丁寧な所作を意識することが大切です。
また、弔辞を読む前に遺族に一礼し、読み終わった後の一礼も忘れないようにしましょう。
弔辞は、ゆっくりはっきりとした声で読み上げることが重要です。 早口や小さい声は聞き取りづらく、故人への想いが伝わりにくくなってしまいます。
また、感情が高ぶり、声が震えてしまうかもしれませんが、落ち着いて心を込めて読み上げましょう。
弔辞を依頼されたということは、故人への想いを伝える貴重な機会を頂いたということです。 しかし、責任重大な役割であるため、依頼を受ける際の注意点や、準備しておくべきことをしっかりと確認しておきましょう。
弔辞の依頼を受けるかどうかは、故人との関係性や自分の状況などを考慮して判断しましょう。 もし、弔辞を読む自信がない場合は、正直に断ることも可能です。
その場合は、早めに断りの連絡を入れ、別の適任者を紹介するなどの配慮をしましょう。
弔辞の内容については、事前に遺族に確認することが大切です。 遺族が望む内容を追加したり、避けてほしい内容を削ったりなど遺族の意向を反映させるようにしましょう。
また、宗教や宗派によって避けるべき言葉や表現があるため、事前に確認しておくことも重要です。
弔辞を読む前に、必ず声に出して練習しておきましょう。
時間配分や言葉遣いを確認し、スムーズに読み上げられるように練習を重ねることが大切です。 また、家族や友人に聞いてもらい、アドバイスをもらうのも良いでしょう。
弔辞は、故人への感謝と哀悼の意を伝える、大切な最後の贈り物です。 形式的な言葉ではなく、自身の言葉で想いを素直に伝えることが大切です。
この記事で紹介した構成や文例、マナーをぜひ参考にしてください。故人を偲び、遺族を慰めるあなたの言葉が、心に残るものになりますように。