第19回 「こころ」の氾濫 |【公式】ご葬儀のことは全葬連(全日本葬祭業協同組合連合会)へ

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2025.03.15
コラム

第19回 「こころ」の氾濫

column

  「病人呼ばわりしないでください」「いったいあなたは何様ですか」――なんとも穏やかならぬ言葉ですが、葬祭業者の側から「こころのケア」にまつわる話題を持ち出した瞬間、このような痛罵を遺族から浴びせられたという話をしばしば耳にします。
  遺族の側にしてみれば、「いま初めて会った人間に、自分のこころの中身がそんなに簡単に分かってたまるか」といった心境なのでしょう。あるいはケアという言葉によって、何かしらの心理的な施療が必要な歪んだ人間というレッテルを貼られた気になってしまうのかもしれません。
  もっとも、今や「こころ」という言葉を見聞きしない日はないというのが実情です。かつては多くの時代批評が心理ブームという表現で世相を語り、また精神科医の斉藤環氏による「心理学化する社会」といったフレーズなども流行しましたが、現在では殊更そのように語る必要がないほど、そこかしこに「こころ」が溢れるようになりました。
  誤解を避けるために述べておくと、私自身は「遺族のこころ」や「故人のこころ」をできるだけ汲み取ろうとする態度は、とりわけ葬祭業において重要だと思っています。それでは問題はどこにあるのかと言えば、生半可に「こころの専門家」の立場を標榜してしまうという点に尽きるでしょう。
  心理ゲームよろしく、したり顔で「あなたはきっと、こんな気持ちですよね」と相手の心情を勝手な枠に嵌め込む。一助を担うことを控えめに伝えるならまだしも、香具師のごとく「癒し」をまくしたてる。それらが本当に顧客への手助けになっているかは甚だ疑問です。現代の葬祭業は着々と専門的職能としての地歩を固めていますが、それが傲慢な態度に結びついてしまっては本末転倒。自らの領分を意識しつつ、謙虚に、だがしっかりと顧客に寄り添うというプロフェショナルな姿勢を今後も変わらず保ち続けたいものです。

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