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第21回 感情労働

先日、ある葬儀で次のような光景を目の当たりにしました。遺族を焼香に誘導する際にディレクターの目に涙が溢れ、その内に感極まって嗚咽を漏れらし始めてしまったのです。後から聞けば、「故人の奥様が遺族席で赤ちゃんを抱きながら気丈にふるまっているのを見ると、つい・・・・・・」とのこと。
興味深いのは、この経験を他の葬祭業者に話したところ、「絶対にあってはならないことだ」という意見と、「人間らしく共感できる」という意見にはっきりと分かれたことです。どちらかと言えば前者は業界内でも中堅以上に、そして後者は若手に多いという印象を受けますが、こうした二極化が見られるのは、葬祭業のプロフェッショナリズムのひとつであった「感情を抑制する」という意識に変化が生じているからなのでしょう。
ところで、このように感情のコントロールが常に求められる仕事を、学術的には「感情労働」という用語で言い表します。典型例としては客室乗務員や電話オペレーター、そして現在では医師や教師なども該当するかもしれません。いずれも人間関係のコミュニケーションを中心とした職業ですが、葬祭業も他業種に増して高度な感情の抑制を要求されるのは明らかです。
とは言え、感情を抑制し過ぎて機械人間のごとく無愛想になってしまうのも、その逆に感情を露わにし過ぎて三文役者の演技のように仰々しくなってしまうのも、対人サービスのありかたとしては難があります。重要なのは感情表現に普遍的な正解など存在しないということであり、その意味では冒頭に述べたディレクターの行為も、一義的な良し悪しではなく「バランス」の問題から判断されるべきです。さて、それでは皆さんは顧客の前でこのような感情表現のバランスをより良く保っているでしょうか。これを機会に、自らの仕事をこの感情労働という側面から省みるのも良いかもしれません。