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第38回 直葬とドライブスルー葬

少し前のことですが、米国ロサンゼルスにある葬儀社の「ドライブスルー葬」というサービスが、ちょっとした話題を呼びました。
米国の葬儀ではビューイング、つまり遺体とのお別れに大きな比重が割かれます。また多くの場合、エンバーミング後の遺体を葬儀社の用意した式場などに安置して、そこに近親者や友人などが次々にやってくるという形式をとります。ではドライブスルー葬とは?
それは、葬儀会館に車でやってきた弔問客がそのまま車から降りることなく、遺体とお別れできるというものです。たしかにファストフード店でもよく見かける、あのドライブスルーと外見上ではさほどの違いはありません。ハンバーガーを受け取る窓口の代わりに、故人の遺体を安置したガラス張りの部屋がある、といったところでしょうか。
とは言え私の記憶が正しければ、このドライブスルー葬は米国が自動車社会に突入して黄金期を築きあげた一九六〇年代頃には、すでに存在していたはずです。しかしあくまでも「まれに見かける」程度で、だからこそ未だにどこかで行われていると、もの珍しさからニュースとして報じられるのでしょう。
さて視線をわが国に戻すと、相変わらず直葬という言葉が世間をにぎわしています。自らの希望で直葬を選んでいるのか、それとも経済的理由で余儀なくされているのかといった事情もさまざまだと思うので、一概に批判することはできません。ただし、やはりその背後には早い・安い・便利というドライブスルーの思想が見え隠れしている感があります。
そして、その思想が死の出来事にふさわしいのかという疑問もさながら、合理性の追求にかけては日本が及びもつかない米国ですら、ドライブスルー葬は珍奇なものに留まっているのも事実。直葬はたしかに効率的な行為であるのかもしれませんが、それが「普通の葬儀」になって良いのかどうかということは、省みるべき問題なのではないでしょうか。