葬儀や法事など、仏教の儀式において欠かせない「お焼香」。 故人の冥福を祈り、弔意を表す大切な作法ですが、いざとなると「正しいやり方は?」「宗派によって違うの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
焼香の作法は宗派によって細かな違いはありますが、基本的な流れは共通しています。
この記事では、焼香の基本的な作法から、宗派ごとの違い、注意点まで詳しく解説します。 これを読めば自信を持って焼香に臨むことができるでしょう。
焼香とは、仏式の葬儀や法要において線香や抹香(粉末状のお香)を焚く儀式です。 焚いた香りを仏様や故人に捧げることで、自らの心身を清め、敬虔な気持ちを表します。
香を焚く行為には、以下のような意味が込められています。
焼香を単に形式的に行うのは良くありません。故人への感謝や尊敬の念、そして安らかな眠りを願う気持ちを添えましょう。
焼香に用いられる香には、主に線香と抹香の2種類があります。
線香と抹香は、それぞれ香りや燃焼時間が異なるため、用途に合わせて使い分けられます。
焼香のやり方には数通りあります。
焼香のやり方は会場の広さや参列者数、宗派の慣習などによって異なります。 それぞれのやり方を事前に確認しておくと、スムーズに焼香を行うことができます。
焼香の作法は、線香を使う場合と抹香を使う場合で異なります。 ここでは、それぞれの作法と回し焼香の作法について詳しく解説します。
勝見陽一. “第2章 弔問と会葬”. 最新版 葬儀・法要・相続の早わかり百科.東京,主婦と生活社,2007,p.115
線香での焼香は、以下の手順で行います。
1.遺族に一礼し、祭壇に向かって合掌します。 2.右手で線香を1本(または複数本)取り、ろうそくの火で点火します。 3.火がついたら、仰いで炎を消します。息を吹きかけて消すのはマナー違反です。 4.線香を香炉に立てます。複数本の場合は、1本ずつ立てましょう。 5.再び合掌します。
線香の本数は、宗派によって異なります。
宗派が不明な場合は、1本または3本を立てるのが一般的です。
線香に火をつけるときは、ろうそくの炎に近づけ、自然に火が移るのを待ちます。
火がついたら、手で軽く仰いで炎を消します。
息を吹きかけて消すのは、仏様に息を吹きかけることになり失礼にあたるため、絶対に避けましょう。
1.抹香での焼香は、以下の手順で行います。 2.抹香を右手の親指、人差し指、中指の3本で軽くつまみます。 3.つまんだ抹香を目の高さまで持ち上げ、額の前で静かに傾けます。(浄土真宗ではこの動作は行いません) 4.抹香を香炉に静かに落とします。 5.静かに合掌し、故人を偲びます。
抹香の量は、一度にひとつまみで十分です。 たくさんつまむ必要はありません。
抹香は、指で強く握ったり、香炉に勢いよく入れたりしないように注意しましょう。 静かに、丁寧に取り扱うことが大切です。
立礼焼香は以下の手順で行います。
勝見陽一. “第2章 弔問と会葬”. 最新版 葬儀・法要・相続の早わかり百科.東京,主婦と生活社,2007,p.114
回し焼香は、以下の手順で行います。
1.前の人から香炉が回ってきたら、軽く会釈して受け取ります。 2.香炉を自分の前に置き、祭壇に向かって合掌します。 3.抹香を右手の3本指でつまみ、香炉に入れます。 4.再び合掌し、隣の人に香炉を回します。
浄土真宗の場合、焼香の際に他の宗派と異なる点があるため注意が必要です。
浄土真宗では、自らの心身を清めるために香を焚くので、仏に祈る意味合いのある“香を額にいただく焼香”はしません。 香をつまんで、そのままゆっくりと香炉に落とします。
回数は、本願寺派は1回、大谷派は2回とされています。
線香による焼香においても他宗派と違い、線香を立てません。 香炉のサイズに合わせて線香を2~3本に折ってから火をつけ、火のついた方を左にして香炉に寝かせます。
浄土真宗では、清めの塩を用いません。
ただし一番大事なのは、お悔やみの心です。 他の宗派から参列して真似事になってはいけません。その場合には作法にあまりこだわらず、心を大切にしてください。
焼香は故人への弔意を表す神聖な儀式です。 失礼のないように、以下のマナーと注意点を守りましょう。
焼香の回数は、宗派によって異なります。
一般的には、回数はあまり重要視されず、故人を偲ぶ気持ちを持って行うことが大切です。
焼香の際は背筋を伸ばし、姿勢を正して行いましょう。 焼香台の前に進み出る際は遺族に一礼し、焼香後は数歩下がったところで再び遺族に一礼するのが一般的です。
これらのマナーを守り、心を込めて焼香を行いましょう。
お焼香は故人を偲び、冥福を祈る大切な儀式で、形式的なものではなく、故人への感謝の気持ちや安らかな眠りを願う心の表れです。
お線香や抹香を用いた作法、宗派による違い、マナーなどをしっかりと理解し、丁寧な所作で心を込めて行いましょう。